”未完全”
「綾乃!私の話し聞いてる?」
なんとなく、上の空の綾乃を感じて、
有美香がそう言った。
「ごめん、あんまり、聞いてなかった、あんまり懐かしくて
昔の事、考えていた。」
綾乃は、素直にそう言った。
「今度、ゆっくり会おう!これ、名刺ね。綾乃の携帯の
番号教えて。」
二人は、携帯の番号を交換した。そして、
また会う約束をして、わかれた。
綾乃の生活の中で、有美香を思い出すときは、
ほとんどなかったといってもいい。
でも、有美香は、違った。有美香の記憶の中で、
綾乃は、なぜかいつも存在していた。
忘れるなんて、ありえなかった…。