”未完全”
 「ただいま。」

綾乃の夫の雄二が、仕事から帰ってきた。

綾乃は、夕食の準備は既に終わっていて、

高校の卒業アルバムを見ていた。あまり真剣に

見入っていたため、雄二が帰って来た事すらきづかなかった。

「どうしたの?卒業アルバムなんかみて?」

雄二は、既に綾乃の前に立っていた。


 「あっ、びっくりした、ごめん、ご飯できてる。

 あっ、そう、今日ね、偶然、有美香にあったの。

 覚えてる?同級生の有美香。」

綾乃は、雄二にそう言った。綾乃、雄二、有美香は

3人共、高校の同級生だった。


 「??あ~ぁ、綾乃といつも一緒にいたよね?覚えてるよ、

 その話しは、今度聞くから、ご飯食べよ、早くゆっくりしたいんだ。」

綾乃は、雄二に話したくて仕方がないのに、雄二からの先手で、

話しを遮られてしまった。仕事で疲れてるのは解るけど、

綾乃だって、一日誰と話す訳でもなく、変なストレスが溜まってる

のだ。

仕事でもあればいいのだけど、今更、働くって事にも自信がない。

もともと、独身の時だって、結婚するまでの腰掛程度に思い、

働いていたタイプだ。雄二は、綾乃が仕事をするのも、

専業主婦でいるのも、どっちでもいいと思っている。


 その日の夕食は、ハンバーグだった。

いつもは、もう少し会話があるんだが、その日の夕食は、

静かだった。綾乃は、雄二に話しを遮られたのが、

おもしろくなかった。普段なら、そんな綾乃の気持ちに、おかまいなしに

雄二が、仕事の話しを始めるのだが、何故か雄二も、黙っている。


二人でいても、何か淋しい…。

綾乃は、そんなふうに思っていた。
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