ダイヤモンド・ヒーロー
大さんだって、甲子園を控えているんだ。
あたしの“ワガママ”に付き合わせる訳にはいかない。
「いいの? 咲良ちゃん? もしかしたら、湊人にはもう会えないかもしれないよ?」
「湊人には…… “ここ”で待っていたら、きっと会えると思うから……。
ここで、待ちます」
湊人は絶対に練習しにグラウンドに帰ってくるはず。
野球大好きな湊人。
「じゃあ、咲良ちゃん。 ここで見学していて。 湊人が来たら、二人でゆっくりしてくれていいから」
「ありがとうございます」
大さんは……。 あたしに“湊人に未練がある”
そう、気付いている。
だから、こうやって気にかけてくれるんだ。
それは、春香も同じ。
「おーしっ、練習すっぞーー!」
グラウンド全体に、大さんの声が響き渡った。