ダイヤモンド・ヒーロー
苦虫を噛んだ顔をして、彼女は立ち去った。
どうしてかな?
湊人との距離が、今までより近付いたのに。
あたしは、寂しい……。
それは、湊人に会えないから?
彼女に“邪魔”と言われたから?
「さっくらー!」
春香が手を振りながら、走ってきた。
「どうどう? 湊人くんには会えたの?」
「残念、湊人は先生に呼ばれたみたいで会えなかった。
…… 春香は仕事終わった?」
来たときに持っていた茶色の封筒は見当たらず……。 どうやら、仕事は終わったみたい。
春香が戻ってきた…… と言うことは。
「学校に、戻ろうか……」
「えっ、会わなくていいの?」
会いたいけど……。
きっと、今は会ってはいけない時。
だから、野球の神様はあたしたちを引き合わせなかったんだ。