ダイヤモンド・ヒーロー
春香の仕事が終わるまで、あたしは野球部の声を聞く事が出来る。
春香には悪いけど…… 野球部の声を聞くことが出来る、この時間が。
――― 1番好き。
坂の下の“朝日学園”はあたしの通う“咲坂女学園”から見えない。
もちろん。 図書館からも。
それでも、あたしはいいの……。 だって、あたしには分かるから。
“朝日学園”には、湊人がいる。
今日も、野球をやっている。
あの時……。
中学3年の時のあたしたちの“約束”を守るために。
今日も“ダイヤモンド”の上で投げているはず。
湊人が“頑張っている”
そう分かるだけで、あたしの心は満たされる。
寂しくなんて…… 無いんだから。
そっと…… 目を閉じると、まだ幼さを残す、中学生の湊人のユニフォーム姿が目に浮かぶ。