ダイヤモンド・ヒーロー
近くて、遠い距離
一瞬、あの姿が――― "咲良"かと思った。
「…… なわけないか」
冷静になって考えると、簡単に分かること。
アイツがこんなとこに来る訳が無い。
文化祭にだって今まで1度も来たことが無いんだ。
「ヤベーな、俺」
どんだけ咲良に会いたいんだよ。
咲良は、今……。
何をやっているんだろうか?
少しは、裁縫が得意になったのか?
勉強、頑張っているか?
「うしっっ! 急いで戻るか」
今、俺がやらなくてはいけないこと。
それは――― “練習”だけだ。
強く床を蹴り上げ、駆け出した。