ダイヤモンド・ヒーロー
「湊人に会うために、フェンスの向こうで待っていた」
俺が廊下から見たあの咲坂の制服を着ていた女の子は――― 咲良だったのか。
長い髪を揺らして立っていたのが、咲良。
「大は、知っていたのか? “咲良”が今日、来ることを」
「あぁ、知ったのは今朝だったけどな」
大には双子の妹がいるって言っていた。
だから、その妹が朝日学園に用事があって、それに咲良がついて来た。
…… そんな所だろう。
「大、ありがとうな。
でも、今。 俺と咲良は会ってはいけないんだよ…… きっと」
野球の神様は、俺たちを会わせなかった。 それは……。
「今は、会ってはいけないんだ」
俺が今、すべき事。
それは――― 練習。
咲良に会うのは、その時だ……。