ダイヤモンド・ヒーロー
頑張るんでしょ?
甲子園、行くんでしょ?
野球が好きなんでしょ?
楽しまないと、ダメだよ……。
ねぇ、湊人―――。
「咲良ー、ケータイ鳴ってるわよー」
遠くてお母さんの声が聞こえるけど……。 今は湊人が忙しい。
湊人の様子がおかしいのは一目瞭然。
だから、今はケータイに構っている余裕は無い。
「咲良ー」
「放っておいて」
「春香ちゃんよ?」
…… 春香?
どうして、春香があたしに電話してくるの?
だって、春香は今……。
あたしの見ている会場で応援しているはずなのに……。
お母さんからケータイを受け取った。
通話ボタンを押して、耳に当てた。
「もしもし……」
春香の明るい声が聞こえてきた。