ダイヤモンド・ヒーロー
「ほら、な。 みんな野球を楽しんでいるだろ?」
マウンドには、俺を心配するような目を向けて立っている部員。 だが、不安なんて感じさせないくらい、堂々と立っている。
応援席は、相手の学校に負けないくらいの声援が飛んで来る。
なさけねーな、俺って。
目先の“甲子園 出場”ばかり、考えすぎていたせいで。
野球そのものを“楽しむ”ってことを、忘れていたんだ。
「湊人が甲子園に行きたい気持ちはみんなと同じだ」
「―――」
「楽しめっ、湊人―――」
頭に昔の俺が浮かび上がってきた。
それは、中学生だった俺と咲良―――。