ダイヤモンド・ヒーロー
八回ウラ【咲良】

ぐらつき





ただ、あたしは走る……。


バスとかなんて使っていられない。

どう考えたって、走った方が早い。


湊人のあの顔……。

なにか“重圧”に押されて、負けそうになっている。


“約束 守るから―――”


あたしとの約束を今でも湊人が本当に覚えているなら…… あたしのせいだ。


あの日……。 卒業式のあの日のことが、湊人の負担になっているなら。


「忘れてくれていいのに……」


あたしは、甲子園のダイヤモンドの上で投げる湊人を見たいと思うけど……。

今の湊人は見たくない。


湊人の野球している姿は本当に“ダイヤモンド”のように、輝いていて 宝石みたい。

湊人が野球のマウンドの“ダイヤモンド”と言うのなら。

あたしには湊人が“ダイヤモンド―――”




< 163 / 200 >

この作品をシェア

pagetop