ダイヤモンド・ヒーロー
八回ウラ【咲良】
ぐらつき
ただ、あたしは走る……。
バスとかなんて使っていられない。
どう考えたって、走った方が早い。
湊人のあの顔……。
なにか“重圧”に押されて、負けそうになっている。
“約束 守るから―――”
あたしとの約束を今でも湊人が本当に覚えているなら…… あたしのせいだ。
あの日……。 卒業式のあの日のことが、湊人の負担になっているなら。
「忘れてくれていいのに……」
あたしは、甲子園のダイヤモンドの上で投げる湊人を見たいと思うけど……。
今の湊人は見たくない。
湊人の野球している姿は本当に“ダイヤモンド”のように、輝いていて 宝石みたい。
湊人が野球のマウンドの“ダイヤモンド”と言うのなら。
あたしには湊人が“ダイヤモンド―――”