ダイヤモンド・ヒーロー
“咲良―――”
湊人にそうやって、名前を呼ばれるのが、好きだった―――。
“咲良”なんて、ありきたりな名前だったけど。
湊人に呼ばれることで、自分の名前が“特別”のようにも感じた。
「咲良―――。 あの日のこと、覚えているか?」
あの日……。 それは、中学の卒業式の事だ。
忘れもしない、あの日。
あたしと湊人が別れた日でもあり、あたしが湊人をフッた日でもある。
「俺、あの日の事。 忘れてねーから……」
湊人の指が、あたしの髪に差し込まれた。
「伸びたなー」
「伸ばしたから」
優しく撫でる、その大きな手。 知らないうちに、また大きくなった?
湊人の成長には、驚かされる一方だ。