ダイヤモンド・ヒーロー




“咲良―――”


湊人にそうやって、名前を呼ばれるのが、好きだった―――。


“咲良”なんて、ありきたりな名前だったけど。

湊人に呼ばれることで、自分の名前が“特別”のようにも感じた。




「咲良―――。 あの日のこと、覚えているか?」


あの日……。 それは、中学の卒業式の事だ。

忘れもしない、あの日。


あたしと湊人が別れた日でもあり、あたしが湊人をフッた日でもある。


「俺、あの日の事。 忘れてねーから……」


湊人の指が、あたしの髪に差し込まれた。


「伸びたなー」


「伸ばしたから」


優しく撫でる、その大きな手。 知らないうちに、また大きくなった?

湊人の成長には、驚かされる一方だ。




< 185 / 200 >

この作品をシェア

pagetop