ダイヤモンド・ヒーロー
力強く頷いた。
生半可な気持ちで俺だって言っているわけじゃない。
それなりに気合いだって…… 覚悟だってある。
「お前には負けたよ……」
監督が鼻で少し笑い、表情が一気に柔らかくなった。
空気まで柔らかくなったような気がする。
「長年、ここで監督をやってきたがお前みたいに言ってきたヤツは初めてだ」
だろうな……。
誰だって試合には勝ちたい。
うまいヤツを連れて試合に出るのは当たり前だが。
「“3年生全員で甲子園”
ったく、お前の頭からそんな事がどこから出てきたんだよっ」
少々バカにされているように思うが、そこは気にしない。
「わかった、相原の言ったようにもう1度考えてみる」
「――― ッッ。 ありそうございます」
夏の手前。
俺の夢に、また一歩。 ――― 近付いた。