ダイヤモンド・ヒーロー
それ以外に眼中に無い。
「…… じゃ、俺は練習に行くわ」
着替えも終わり、部室から出ようとした。
「先輩っ!」
また、市川に呼び止められた。
急いでるが……。 振り返る。
「なに?」
「前に、杉本先輩が言っていたんですけど……。 先輩って“――― 忘れられない人がいる”って……。 本当ですか?」
“――― 忘れられない人”か。
咲良のことだな……。
まあ、咲良を忘れたことなんて無いが。
「じゃ、俺は行くわ。
…… 市川も頑張れよ」
「ちょっ、先輩っっ!」
後ろでまだ、俺の名前を呼ぶ市川には振り返らず。
真っすぐマウンドに向かった。