ダイヤモンド・ヒーロー




それ以外に眼中に無い。


「…… じゃ、俺は練習に行くわ」


着替えも終わり、部室から出ようとした。



「先輩っ!」


また、市川に呼び止められた。

急いでるが……。 振り返る。


「なに?」


「前に、杉本先輩が言っていたんですけど……。 先輩って“――― 忘れられない人がいる”って……。 本当ですか?」


“――― 忘れられない人”か。


咲良のことだな……。

まあ、咲良を忘れたことなんて無いが。



「じゃ、俺は行くわ。
…… 市川も頑張れよ」


「ちょっ、先輩っっ!」


後ろでまだ、俺の名前を呼ぶ市川には振り返らず。

真っすぐマウンドに向かった。





< 76 / 200 >

この作品をシェア

pagetop