ダイヤモンド・ヒーロー
「いいか、湊人。 よーく、聞けよ?」
「……」
「湊人の思いは分かった。 湊人自身、“今”何をやらないといけないのか分かっているか?」
俺が“今”やらないといけないこと……。
「――― “練習”しかねーよっ」
「わかってんじゃん」
大の目が、三日月のように細くなった。
不安だったら、練習しろ。
約束を守りたいなら、練習しろ。
こんな単純なこと、俺は忘れていた……。
――― 甲子園。
この夢は、俺だけが見ている夢じゃないんだ。
俺たち――― 野球部員の夢でもあるんだ。
「大、サンキューな。 なんか…… 目が覚めたわ」
「覚めんのが遅ーんだよっ」
確かに…… 遅いかもしれない。
「大、練習すんぞっ」
それでも、今は。
明日の試合だけを考えよう。
甲子園への戦いは、もう始まっているんだ―――。