キミの心の声を聞かせて

「おぉ~い、智樺ぁ!どこにいるんだぁ~」


ハッ!雄大先輩だ!雄大先輩が、あたしを探してる。


あたしは、バッとシュンから離れて、俯いて「ごめん」だけ言って、逃げ出した。


シュンを振り向かないまま。


逃げたんだ…。






「おっ、おせぇ~ぞ。智樺」


部活のドアから、顔をヒョコっと出していた雄大先輩。


「どこいってんだよ?ヨッシー、遅いって、もう少しでキレそうだぞ」


窓から入ってくる生暖かい風を受けて「早くエアコンなおしてくれよなぁ~」と文句を言ってるヨッシーを笑いながら


早く来いよと言う雄大先輩に

「ごめん。今、行くよ」


そう言って部室の中に入った。


雄大先輩とすれ違う時に「シュン知らない?」って聞かれて

あたしは…「うん、知らない」と嘘をついてしまった。


雄大先輩との関係を壊したくないから


シュンから告白された事も

雄大先輩が好きな事も

あたしの胸の奥に、新しい秘密にして閉じ込めた。




ズルイあたし…。




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