キミの心の声を聞かせて
「雄大先輩は嘘つきだね…」
「えっ?なにが?」
「だって…好きなんでしょう?恭子さんのこと」
雄大先輩の顔をジッと見つめたら、戸惑いの表情を浮かべながら、その瞳は大きく見開かされていた。
「嘘つきですね、雄大先輩は…女の子には興味ないって言ってたのに」
笑いながら言ったけど、心ん中はグチャグチャで立っているのがやっとだった。
雄大先輩は、何も言わないまま、ただ、あたしの瞳をジッと見つめている。
「あたし、きょうは1人で帰ります」
その視線から逃れるように、あたしは雄大先輩から視線を逸らして床に置いていた鞄を拾い雄大先輩の前を通り過ぎ部室を後にした。
「えっ?おい、待てよう!」
後ろから雄大先輩の声が聞こえてきたけど、聞こえないふりしてスタスタと歩いた。
けど「待てって」足が長い先輩にすぐに追いつかれて腕を掴まれた。
「おい!智樺!?」
グイッて腕を引かれて見上げた雄大先輩の瞳は、ユラユラ揺れるビー玉みたいに大きく見開かされ
あたしの腕を掴んでいた手の力は緩み
解放された腕をギュッと掴んで、雄大先輩から逃げるように学校を飛び出した。