奥手な私と奥手な君
「それじゃあ、まっ君もついでに交換しちゃおっか☆」
呆然と立ちすくんでいた彼に安部さんがニヤニヤしながら言った
その姿はまるで社内で良い感じのOLと新人をからかう定年間際の上司のようだ
「え、俺…メールとか…あんまりしない」
初めて聞く彼の声
なんて…
想像通りの低い声
でも耳心地の良いリラクゼーションのような声
聞いているだけで仕事のストレスを忘れられそう…
それと
あだ名、すっごく可愛いな
まっ君か…
ふふっ
「あら!!雅美ったら伊場君のアドレス聞くよりも…まっ君の方が嬉しいんだ~」
さっきからかう云々で伊場君を怒っていたヒロミがさっそく私をからかった
もうっ…
「なになに雅美ちゃん!!ナイスイケメンな俺様よりもこっちのヤク…もがっ」
言い終わる前に安部が伊場君の口を覆った
「伊場ちゃん、少し黙ろうか」
「さ~せ~んっ」
きっといつもこんな感じなんだろうな
「でも、奥手な雅美が喜ぶなんて…まっ君やるねぇ!!」
ヒロミがばしばしと彼の背中を叩く
苦笑いしながら
「お世辞に決まってるよ」
なんて彼は言う
こういう時
いつも否定される方が楽になるのに
なんでか
彼に否定された時に
チクンと小さな針が刺さったような痛みが走る感覚に襲われた