Spirit of Dragon~断罪の炎編~
「お?ここのギルドの依頼書に新聞の切れ端?ずいぶん古い内容だな。『国王軍進軍せず』だってよ。そりゃそーか。よくて相討ち、悪けりゃ壊滅だかんな。ほぉほぉ。で、コレ見せてどーする気なの?」
 
「戦う」
 
 
…………ハッ。
 
 
一言。そりゃもうサラぁっと当然かのように少女は言った。
 
 
「…………。あっはっはっは!元気のいいねーちゃんだ」
 
「なぜ笑うの?」
 
 
そりゃ笑うしかないだろう。
 
 
「あのな、ヴァルハイド見た事あるか?」
 
 
その質問に少女はコクリと頷いた。
 
 
「亜種っちゃあ亜種だけども、まがりなりにもあいつはドラゴン。
 
鋼の鱗で被われた外皮は魔法も剣も通さず、空を飛ぶために進化した腕は疾風を巻き起こし弓すら届かねぇ。
 
獲物を狙う巨体と爪は一瞬にして人間を鎧ごと紙のごとくくっしゃくしゃにする。
 
口から吐く火球をくらえば骨まで残らない。
 
王国屈指の精鋭部隊がなんとかやっと倒せるか倒せないかの相手だぞ。
 
他の国ももはやヴァルハイドの事は“天災”の部類に入れて手を出さないか、倒すまでいかなくても退けるくらいしかできない。
 
何が悲しくてヴァルハイドと対峙しなきゃなんねぇんだよ」
 
 
そこまで一気にまくし立て席を離れようとすると、
 
 
「それはあなたが一人でヴァルハイドを一度退けた事があると噂を聞いたから。あたしだけじゃ無理。
あなたの力が必要なの」
 
 
ほぅ。
 
 
少女の言葉に俺は目を細めて席に座り直した。
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