一匹狼と天然子羊

口付けを交わした後、私達は気まずくなり視線を反らした。

何回もやっているのに、それでも恥ずかしいのだ。


「あ、あのさ、これ私から」

「開けるぞ?」

「うん……」


弘人くんがゆっくりと、包みを開けていく。

「財布か?」

「うん。この前、財布ボロくなったし、変えよっかなぁって言ってたから」

「そっか、ありがとう」

「何か素っ気ないなっ。嬉しくなかった?」

「否、嬉しい」

「ホントに?」

「ああ」


そう言うと、弘人くんはにっこりと優しく笑った。


この笑顔は私だけに見せてくれるもの。

弘人くんは、余り周りに笑わないのだが、私の前だと普通に笑ってくれるのだ。

そのちょっとした事に、私は嬉しさを感じる。


それから私達はホテルへと向かった。
< 27 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop