一匹狼と天然子羊
口付けを交わした後、私達は気まずくなり視線を反らした。
何回もやっているのに、それでも恥ずかしいのだ。
「あ、あのさ、これ私から」
「開けるぞ?」
「うん……」
弘人くんがゆっくりと、包みを開けていく。
「財布か?」
「うん。この前、財布ボロくなったし、変えよっかなぁって言ってたから」
「そっか、ありがとう」
「何か素っ気ないなっ。嬉しくなかった?」
「否、嬉しい」
「ホントに?」
「ああ」
そう言うと、弘人くんはにっこりと優しく笑った。
この笑顔は私だけに見せてくれるもの。
弘人くんは、余り周りに笑わないのだが、私の前だと普通に笑ってくれるのだ。
そのちょっとした事に、私は嬉しさを感じる。
それから私達はホテルへと向かった。