浮気女の嫁入り大作戦
作戦3
俺の憑いている毎熊奈緒は、風呂に浸かりながら左手をまじまじと見つめている。
わざわざサロンに通って整えている自慢のネイルは、いつもより少しだけ華やかである。
しかし、奈緒が見ているのはネイルではない。
飾られていない薬指なのだ。
ちゃぷっと音がして、奈緒の左手に少し日に焼けた手が重ねられた。
「爪、かわいいじゃん」
沢田が親指で奈緒の薬指に触れた。
奈緒から小さくため息が漏れる。
「もうすぐ友達の結婚式だから、それっぽくしてもらったの」
淡いピンクのラメに、小さなラインストーンを流すように埋め込んだジェルネイル。
美人の奈緒によく似合っている。
「へぇ、友達、ジューンブライドじゃん。雨降らなきゃいいね」
「大丈夫。その子、超~晴れ女だから」
奈緒が手を湯に沈めると、またちゃぷっと軽い音がした。