浮気女の嫁入り大作戦
様子がおかしい。
それにさっきから、迷いのオーラがぐるぐるしている。
「どうしたの? 元気ないよ」
「長旅で疲れただけだよ」
「そっか。それじゃ、早く帰ろ」
樹の荷物を一つ持ち、奈緒は歩き出した。
「奈緒」
呼び声に振り向くと、樹は眉間にしわを寄せてやはり迷いのオーラを発している。
「なに?」
「実は俺」
そこまで告げて、樹はまた黙ってしまった。
さすがの奈緒も、話がある程度重いことを読み取っただろう。
「言いかけてやめないでよ」
そうだぞ、樹。
気になるではないか。
インド人は俺を見て笑っている。
まただ。
嫌な予感がする。
「実は俺、転勤が決まったんだ」
「え?」
奈緒の心に広がる不安。
この状況だ。
おおかたの予想はつく。
「どこに?」
「……インド」