浮気女の嫁入り大作戦
すっかり煮詰まった奈緒はリフレッシュしようと給湯室に向かった。
タバコに火をつけてみるが、どうやら不味く感じたらしく、まだ長いのに火を消す。
「毎熊さん」
カシャン!
突然の呼び声に驚き、持っていたカップを落としてしまう始末だ。
「あーあー……ごめん、驚かせた」
奈緒を呼んだ沢田は、飛び散ったコーヒーとカップの破片から奈緒を離す。
「怪我、ない?」
「うん」
「顔色悪すぎ。具合悪いなら、今日はもう帰りなよ」
「……うん」
奈緒はただ立ち尽くし、彼がカップを片付ける様子を眺める。
彼に憑く花枝が、奈緒の方を見ていた。
「ねぇ、沢田くん」
「んー?」
「嫁入り作戦は失敗だったみたい」
沢田は深く聞くことはせず、黙って破片を袋に入れて床のコーヒーを拭った。