浮気女の嫁入り大作戦
最終作戦
俺が憑いている毎熊奈緒は、自宅の浴室で昼間から泡風呂を楽しんでいる。
昨日気分が悪いということで早退し、この日は大事を取るということで欠勤した。
本当は体調など悪くないのだが、昨日のむくんだ酷い顔を見た上司は、
「ゆっくり休みなさい」
と欠勤を快諾したのだ。
外は生憎の雨。
気分転換を試みたが出掛けるには不便な天気であるため、こうしてのんびりと泡風呂に浸かっているのである。
「泡風呂なんて、家で入るの久々だなぁ」
沢田とホテルではよく利用しているが。
独り言は浴室に虚しく響く。
ふーっと泡に息を吹きかけると、泡は思ったよりも重たく散った。
それが自分のため息の重さのような気がして、奈緒はもっともっと泡を散らした。
自分が不幸だと認めたくない奈緒の、下らないあがきである。