浮気女の嫁入り大作戦
そして出されたピースサインに、奈緒と真琴も笑顔になる。
「わぁっ! おめでとうございます!」
「流産しやすい体だから、まだ安心はできないけどね」
「妊娠中のこととか、経験者の私に何でも聞いてください」
「こいつぅ、生意気~」
「お祝いはやっぱオムツが良いですか?」
「ちょっと、気が早いよ」
三人の笑顔を感じ取ってか、佐和子に憑く赤ん坊がキャッキャと笑う。
めでたい懐妊のニュースに比べれば、奈緒の破局なんてちっぽけな出来事のような気がした。
それは奈緒も同じだったようで、独りになったという漠然とした不安は、すっかり祝福のオーラにかき消されていた。
そして、この日の夕方。
奈緒が帰宅前の一服をしていると、沢田が疲れた顔をして給湯室へやってきた。
「あ、お疲れ」
「お疲れー」
気だるいオーラが煙に混じって渦巻く。