浮気女の嫁入り大作戦
関係に終止符を打った二人から気まずい雰囲気が漂う。
気まずさは沈黙を呼び、空気が重い。
煙を吸っては吐く。
乾いた音だけが響いた。
そんな状態に耐えきれなくなった奈緒は、吸い殻を灰皿に押し付けながら声を発した。
「あたしさ」
思ったより、響く。
「うん」
沢田の返事は小さかった。
「別れた」
「は?」
「作戦失敗。逆プロポーズして、断られて、別れた」
奈緒は軽くそう告げて彼の反応を待つ。
「……あっそ」
沢田の反応は冷たかった。
もっと何かあるだろう。
慰めの言葉とか。
奈緒は少しムッとして、
「それだけ」
と話を締め括る。
沢田は奈緒が彼の前を通って部屋を出ようとするのを、煙を深く吐き出し遮った。
「その割には、元気じゃん」