浮気女の嫁入り大作戦

 関係に終止符を打った二人から気まずい雰囲気が漂う。

 気まずさは沈黙を呼び、空気が重い。

 煙を吸っては吐く。

 乾いた音だけが響いた。

 そんな状態に耐えきれなくなった奈緒は、吸い殻を灰皿に押し付けながら声を発した。

「あたしさ」

 思ったより、響く。

「うん」

 沢田の返事は小さかった。

「別れた」

「は?」

「作戦失敗。逆プロポーズして、断られて、別れた」

 奈緒は軽くそう告げて彼の反応を待つ。

「……あっそ」

 沢田の反応は冷たかった。

 もっと何かあるだろう。

 慰めの言葉とか。

 奈緒は少しムッとして、

「それだけ」

 と話を締め括る。

 沢田は奈緒が彼の前を通って部屋を出ようとするのを、煙を深く吐き出し遮った。

「その割には、元気じゃん」

< 160 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop