浮気女の嫁入り大作戦

「婚活やり直しだな」

「そうね」

「アテはあるの?」

 奈緒は軽くため息をつきながら首を横に振った。

「考えてみれば、あたしも今年で26なのよね。一からって考えると、なんだか虚しいな」

 愚痴のようにこぼした奈緒を、沢田は鼻で笑う。

「確かに。売れ残り予備軍だな」

「うるさいなー。沢田くんだって同じじゃない。彼女いないくせに」

「俺は違うよ」

「はぁ?」

「男は30からだし。これからこれから」

「何それ。男ってズルい。つーかそしたらまだまだじゃん」

 ぷっと吹き出した奈緒を見て、沢田も微笑む。

 そんな二人を見て、花枝も笑った。

 俺は久々に、少しだけ幸せな気持ちになった。

 俺に向けられた笑顔ではないけれど。

 空気が和んだところで、奈緒が再びポツリと呟く。

「あたし、沢田くんの彼女になろうかなぁ」

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