浮気女の嫁入り大作戦

 沢田の言う通りである。

 さすが、ダテに愚痴ばかり聞いてきたわけではないらしい。

 しかし、それでもお前は奈緒を思っては胸を痛めてきたではないか。

「そんなことないもん」

「自分のこと、わかってないなら教えてあげるよ」

「何をよ?」

「毎熊さんの魅力は、その顔とちょっとエロいとこだけ」

 奈緒の目に、涙が滲む。

「だけって……」

 こぼすわけにはいかない。

「自分がどれだけイイ女だと思ってるか知らないけど、アンタ、テレビで見るくらい典型的な嫌な女だよ」

 ダメだ。

 ここで泣いたら負けだ。

「でもまぁ、ヤれる男くらいなら、合コンですぐに見つかるんじゃない? でも結婚をほのめかせば、きっとまた逃げられる」

 奈緒の怒りと悲しみの感情がぐちゃぐちゃに放出される。

 沢田は至って冷静だ。

 奈緒は奥歯をグッと噛み締めた。

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