浮気女の嫁入り大作戦
「ねぇ、何なの? ヤれなくなったらそんなにあたしが嫌いになったわけ?」
声が震える。
悲しみのオーラが消え、怒りが湧き出てきた。
「違うよ。気付いてないこと、教えてあげただけ。なかなかいないんじゃない? 毎熊さんに耐えれる男」
沢田は溜め息混じりにそう言った。
奈緒は目にいっぱい涙を溜めて、
「ていうか、本気にしないでよね。ホントにあんたなんかの彼女になりたいわけないじゃない」
バン! と流し台の縁にストレスをぶつけ、奈緒は給湯室を飛び出した。
沢田はまだ何か言いたそうにしていたが、奈緒にそんなことは関係ない。
そのまま荷物を持ち、そそくさと会社を後にした。
コツコツコツコツ……
ヒールで走る音を響かせビルを出ると、奈緒の目からはとうとう涙が溢れてしまった。
(何よ、ただの浮気相手だったくせに!)
心の中でそう叫んでも、沢田の言葉が頭から離れない。