浮気女の嫁入り大作戦

 正直、俺もショックだ。

 沢田が奈緒に文句を付けたことではない。

 沢田が奈緒をもう思っていないことである。

 彼には花枝が憑いている。

 もし花枝が俺を求めているならば、沢田はあそこで奈緒を突き放したりしないだろう。

 俺が軍に召集されて、気持ちが離れてしまったのか。

 俺は変わらず、花枝のことを思っているというのに。

 いや、それは霊になった俺のわがままだ。

 生前、俺は願ったではないか。

 花枝の幸せを。

 死んで行く俺のことは忘れて、誰かもっと良い人と幸せになってほしい……と。

 花枝はこの日も変わらず沢田の肩に手を載せて微笑んでいた。

 俺の方なんて見向きもしなかった。

 その態度で気付くべきだったのだ。

 霊になった花枝は、俺を求めてはいない。

 ただ沢田の守護霊として、彼を守っているだけなのだと。

< 167 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop