浮気女の嫁入り大作戦
正直、俺もショックだ。
沢田が奈緒に文句を付けたことではない。
沢田が奈緒をもう思っていないことである。
彼には花枝が憑いている。
もし花枝が俺を求めているならば、沢田はあそこで奈緒を突き放したりしないだろう。
俺が軍に召集されて、気持ちが離れてしまったのか。
俺は変わらず、花枝のことを思っているというのに。
いや、それは霊になった俺のわがままだ。
生前、俺は願ったではないか。
花枝の幸せを。
死んで行く俺のことは忘れて、誰かもっと良い人と幸せになってほしい……と。
花枝はこの日も変わらず沢田の肩に手を載せて微笑んでいた。
俺の方なんて見向きもしなかった。
その態度で気付くべきだったのだ。
霊になった花枝は、俺を求めてはいない。
ただ沢田の守護霊として、彼を守っているだけなのだと。