浮気女の嫁入り大作戦

 ホテルを出ると、もわっと熱気が二人を襲った。

 二日酔いには実に厳しい天候だ。

 奈緒は何とか沢田についていくが、次第に少しずつ距離が開く。

 それをアピールしようと彼の腕を掴むと、沢田は仕方なく歩幅を合わせ、無愛想な顔で聞いた。

「毎熊さん、これからどうすんの?」

「家に帰るけど」

「そうじゃなくて、仕事とかだよ。ていうか、どうして会社辞めちゃったの?」

 次の仕事なんて決まっていないし、会社を辞めたのも何となく嫌になったからだ。

 深く考えて辞めたわけではない。

 奈緒は答えられなかった。

「言いたくないなら聞かないけどさ、もしかして俺のせいで落ち込んじゃったかなぁとか思って」

 奈緒はまた答えられない。

 沢田の考えは、あながち間違ってはいないからだ。

 しかし黙秘の真意は、しっかり彼に伝わった。

「はぁ……マジかよ」

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