浮気女の嫁入り大作戦
責任を感じているのか、沢田から気候とは裏腹なキーンと冷たいオーラが出る。
花枝は眉を下げて不安げに俺を見た。
試しに手を差し伸べてみると、やはりスッと空を切った。
「別に、そんなんじゃないから。勘違いしないでよ」
今更言ったところで説得力はない。
二人はまた気まずくなった。
改札に上がるためのエスカレーターを降り、バッグからSuicaを収めた定期入れを取り出す。
取り出したら後ろから走ってきた少年にぶつかり、定期入れを弾かれてしまった。
パサッと沢田の足元に落ちる。
気付いた沢田が身を屈め、定期入れに手を伸ばす。
ネクタイを絞めずボタンを開けたワイシャツの襟の間から、シャラッといつものネックレスが飛び出した。
拾い上げた後も襟に載るチェーン。
定期入れはすぐに奈緒の手に戻った。