浮気女の嫁入り大作戦
生前死後
俺が生まれたのは大正の末期だ。
名前は田村秀二郎という。
物心が付いた時には昭和が始まっており、日本はまだまだ貧しい国だった。
4人兄弟の次男坊として東京に生まれた俺は、それはそれは自由奔放でわんぱくな男児に育った。
言ってみればガキ大将。
体力には自信があった。
町では一番足が早かったし、相撲だって強かった。
風邪もひかぬ健康優良児だが、傷は人一倍作って帰ったものだ。
当時義務教育ではなかった中学に進学して数年経った、14~15歳だったと思う。
あまり女にはモテないタチだったが、そんな俺に話しかけてきた女がいた。
浅倉花枝という級友だ。
「ねぇ、秀ちゃんっていっつも制服が真っ白ね」
彼女はそう言って、俺の汚れた学生服の肩を撫でた。