浮気女の嫁入り大作戦
5年通った中学を卒業し、俺は高等学校へと進学した。
当時、高等学校へ進学する者といえば、結構なエリートである。
この頃には、さすがに服を汚したりはしなくなっていた。
花枝は進学しなかったが、互いの家が遠くなかったことも幸いして、俺たちは年頃にして親密な関係になった。
恋人同士だと公言していなかったし、会うのはもっぱら中学の近くにある寺の境内。
夜になると少々不気味であるが、逢瀬の夕方には夕日がいい具合に差し込む、ロマンティックなスポットだった。
18になった頃、俺は意を決してこう告げた。
「なあ、花ちゃん。俺が卒業して就職したら、一緒になってくれるかい?」
つまるところ、プロポーズである。
花枝はにっこり微笑んで、
「はい。よろしくお願いします」
と言って、深々と頭を下げた。
その時の感動は、霊になった今でも忘れられない。
俺は花枝と結婚し、順風満帆な未来が待ち受けていると信じてやまなかった。