浮気女の嫁入り大作戦
「ねえ秀ちゃん。子供は何人くらい欲しい?」
ある日、花枝はにっこり笑ってそう聞いてきた。
茶色がかった髪が夕日を浴び、橙色に染まって眩しかったのを覚えている。
「多い方がいいなぁ」
俺は確かそう答えたと思う。
花枝もきっと希望を抱いていた。
俺との輝かしい未来を描いていた。
「あ、戦闘機」
地響きすら覚える音に空を見上げると、日本軍の戦闘機が上空を通過していた。
これから戦いに行くのだろう。
俺は敬意を表し、戦闘機に向かって敬礼をした。
国のために、しいては俺と花枝の幸せな未来のために。
必ずや勝利してほしいと、心から願って。
「兵隊さんは怖くないのかなぁ」
ぽつり、花枝が呟いた。
戦闘機が去ったあとの夕焼け空は、ただ暖かく、穏やかだった。