浮気女の嫁入り大作戦
生きて花枝に会ったのは、この日が最後だ。
家を出たのはそれから間もなくのこと。
軍に入り訓練を受けるなど、何かと忙しい日々を送る。
確実に向かい来る死に向かって。
陛下や国のために華々しく散る術を学ぶことに専念した。
ひいてはそれが、花枝や家族、友人の明るい未来に繋がると信じて。
やがて少尉という称号を与えられ出兵する日が決まるまでに、時間はそうかからなかった。
日が近くなると遺書を書かされた。
遺書といっても思っていることを自由に書いて良いわけではない。
手紙はすべて検問を通されるので、国の意思に背くようなことは書けないのである。
日本男児として、身内にさえ笑って誇らしく死ぬと宣言しなければならない。
天皇陛下のために死ねるから、どうかみんなも喜んでくれ、と。
家族に宛てたもの、親しい友人に宛てたものを書き上げると、花枝宛の手紙も書かなければいけない気になった。