浮気女の嫁入り大作戦
実のところ、召集のことを告白して以来、花枝とは疎遠になっていた。
あの日以来寺には行かないようにしたし、地元を離れてからは手紙さえ一度も書いていない。
それが花枝のためだと思ったのだ。
やがてもう少し年を重ねれば、いい人と出会い、ゆくゆくは結婚だってするだろう。
俺に未練など残していては、幸せな家庭など築けないはずだ。
花枝の未来の重荷にはなりたくない。
……そう思っていたのに。
死を目前にして、いささか欲が出たのかもしれない。
正式に婚約をしていたわけではないが、楽しく幸せだった日々を共に過ごした彼女に、せめてお礼くらいは言おう。
……という体で、筆を取ることにした。
本心としては、もちろん、花枝の心の片隅に、いつまでも居座りたいという気があったのだが。