浮気女の嫁入り大作戦

　想像してみてほしい。

　国家権力に突然、

「国のために死ね」

　と言われたらどう思うか。

　拒否権はないのだ。

　喜ばねばならないのだ。

　刻一刻と迫り来る、出撃の時間を止めることはできない。

　俺の役目は、爆弾を積んだ飛行機で敵国の戦闘機に突っ込むこと。

　死ぬのは痛いだろうか。

　苦しいだろうか。

　できれば即死したい。

　死に対する恐怖で手足が震えた。

　布団の中に深く潜ってみたが、全然暖かくなかった。

　家族、友人、そして花枝……。

　走馬灯とは、何も死ぬ直前だけに見えるものではないらしい。

　みんなのことを思うと涙が止まらなかった。

　男として、戦士として、他人に涙は見せれない。

　俺は布団に潜ったまま、声を殺して泣いた。

　眠るなんて無理だった。

　生きている残りわずかな時間を、睡眠に使うなんて……。

　他に何ができるということはないが、もったいなさすぎる。