いちご塾・更紗の課題作品
見慣れた天井を見つめながら、私は何とか呼吸を整える。


嫌な汗と涙のせいで、身体はすっかり冷え切っていた。


頬を伝い落ちた涙が、首もとで水たまりを作っているんじゃないかと思うくらいに、夢の中で私はひどく泣いていた。


彼を失ってから、もう四年も経つというのに。


今更になって毎晩あの日の夢を見るのはどうしてだろう。


否、本当は理由は分かっている。


私は重い身体をベッドから引き剥がし、月明かりを頼りに、机の上の“それ”を見つめた。


懐かしい人がくれた、日本からのエアメール。







『寿』








金色で印字されたその文字は、異国の月明かりを浴びて、キラキラと無邪気に輝いていた。


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