ACcess -焔-
オレは彼の後ろ姿と、殆ど入っていないアイテムボックスを交互に眺めた。
「なぁーあぁー…
 オレさ、アジトに戻りたいよ…?」
遠慮がちに呟く。

しかし、こっちの声は届いているにも関わらず無視をする。

まぁ、いつもの事だ。

それにそれが彼、だ。


それが彼だ、と言ったが彼の事を実はよく分からないんだ。

何でだろう…。オレはあまり彼の事を知らない。

ネットでの彼は知っている。
それがリアルでもそうか、と言われれば分からない。

もしかして演じているのかも。
ドンクレというアバターを。

オレはオレだ。
リアルでもこんな感じ。
素…っていうのかな?


急にクルリとドンクレは後ろを振り返った。
「…忍。」

急に名前を呼ばれオレはビックリした。
「…な、なんだよ?」
様子を伺うように聞き返す。

しかしまた無言。

暫くそのまま待っていると、彼は振り返って答えた。

「好きだよ、忍。」
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