浮気彼氏との約束
――――――――沈黙。
後ろから抱きしめられる形の私は、相手の顔なんて見えない。
でも、男の子だなってことは、腰に巻き付いている腕を見ればすぐわかった。
「なーんで泣いてんの?」
耳元で甘い、低い声がした。
しかし、男の子とこんな至近距離になったことも、ましてや抱きしめられたこともない私は、硬直してしまって声を出すこともできない。
「無視はいけねぇぜ?」
彼はそう言って、私をくるっと半回転させた。
彼の顔が見えた、と同時に手をグイッと引かれて彼の胸の中へと倒れこんでしまう。
「ハハッ、大胆だね」
…………誰のせいですか。
“手、離してください”
嫌味も込めてキツく言ってやろうと思ったのに、
今度は前からギュッと抱きしめられた。
――大丈夫、泣いてもいいよ。
とても、とても優しい声で囁かれた。
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