LAST LOVE -最愛の人-
初恋の記憶は中学二年。
勿論それまでにも、誰が好きだの嫌いだのという話題はあったっとは思う。
が、それは幼い感情での好き嫌いの話であり。
はじめて恋愛として『好き』を意識したのはその頃だと思う。
特別仲が良かったわけでは無いが、同じクラスの、綺麗な瞳の女の子だった。
たまたま部活終わりにスパイクを直していたとき。
その日はオレンジが染み渡ったような夕焼け空だった。
「向井くん、明日の試合ユニフォーム貰えたんだね」
「先輩が怪我しただけで、実力じゃ無いけどな」
「先輩の欠場に滑り込むのだって実力のうちだよ」
「いや、ぶっちゃけかなり不安」
「二年でユニフォーム着られるだけで凄いよ。もっと威張っちゃえばいいのに」
「…ただの不幸中の幸いで威張るのはおかしいだろ」
「―――向井くん
謙虚なのはいいことだけど
『もっとできる、もっと上へ』
って思う気持ち、隠さなくていいと思うよ」
「…え?」
「そしたら向井くん、先輩を越えちゃうかも」
オレンジの逆光が眩しくて、拓弥は目を細めた。