『好き』を教えて
「寒っ…」

息を切らし、しゃがみこんだ私は落ち着いてくると夜風の冷たさに身震いした。

どうしよう…。
部屋に戻っても遠藤さんがまだいるかもしれない。

だったら…戻れないよ…。


寒さと情けなさで涙が滲んだ私は突然の大音量に心臓が止まるかと思うほど驚いた。

手の中で響いてるそれを見つめて息を飲む。

家を飛び出した時に無意識に掴んだ携帯が音と共に光っている。

上着じゃなくて携帯掴んでどーすんの…。

自嘲気味に笑ってしまった。

携帯を開くと名前がなく、番号のみが表示されてる。

誰…?

遠藤さんではなさそうだし、とりあえず出てみた。

「……はい…」

『高野?ごめん。今、話して大丈夫か?』

この声………?

「木下さん…?」

『やっぱり、気になってさ。俺のせいで修羅場ってたらマズイかなって』

「大丈夫です」

さっきまで滲んでた涙が乾いて、代わりに笑い声が出た。

『そうか。それならよかった。じゃーな』

「あ…」

『どうした?』

「いえ…。ありがとうございました」

『……高野、今どこにいてんの?』

「え?」
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