『好き』を教えて
「遠藤さんは…大学の講座の先輩で。いろいろ教えてもらってるうちに親しくなって…お付き合いを申し込まれたんです」

「ふーん…。よくあるパターンじゃないの?」

車のシートをリクライニングさせて寝転んでいる木下さんは天井を見つめている。

「そうですね…。遠藤さんは優しかったし頼れる人だって思ったから…」

「それって好きじゃないって事?」

木下さんの質問に私は答えに詰まった。

ただ…交際を申し込まれたから…嫌いな人じゃなかったから…。

そんな気持ちの方が多くを占めてたのは事実。

「そう……かもしれないです…」

「でも、カレシの方は高野に本気っぽくない?」

無言で俯く私に木下さんの言葉が胸に刺さる。

「すげー怒ってたじゃんか」

そう、怒ってた。
でも何に対して?

携帯に出なかった事?
夜中に一人で外出した私?
私を送ってくれた木下さん?
それとも…付き合ってるにも関わらず身体を許さなかった事?

「どうして怒ってたか…私にはもうわからないです」
< 17 / 55 >

この作品をシェア

pagetop