『好き』を教えて
何とか遠藤さんに会わず一日を終えた私はバイトに向かった。

木下さん、来てるかなぁ…。

タイムカードを押すために事務所前に行くと、開いたドアからパソコンを叩いている木下さんが見えた。

私の足音にふと顔を上げた木下さんと目が合う。

私は軽く会釈をして、その場を立ち去った。

ただ目が合っただけなのにすごくドキドキする…。

昨日、木下さんにはみっともないとこばかり見られちゃったから…恥ずかしいんだ。

迷惑をかけてしまった後ろめたさもあるし。

今だ治まらない鼓動の激しさを深呼吸で無理矢理抑え込む。


とりあえず、ちゃんと仕事しなきゃ。
これ以上、木下さんにダメな奴だと思われたくない。





閉店になってやっと気分が楽になってきた。

大きなトラブルもなかったし無事に一日が過ぎた安心感。

「お疲れ」

後ろからかかった声に振り向き口を開こうとしてすぐに声が出なかった。

「……お疲れ…様です…」

「あんまり寝てないのに頑張ってたな」

苦笑する木下さんに曖昧な笑みを浮かべる。
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