『好き』を教えて
「そーんな事ありませんよー!今日は店長がいるから木下さんは早く上がれるんじゃないかってみんなと言ってたんですよ」

「久しぶりだし行くか」

「やった!じゃあ後で」

頷く俺をにこやかに見送る。

まぁ、何だかモヤモヤしてるしたまには飲みに行くのもいいかもな。

終業後の楽しみが出来て気分も浮上した。




「店長。俺、今日早く上がっていいっすか?」

「何だ?デートか?」

ニヤニヤと中年男の好奇に満ちた笑みを浮かべる店長に軽くため息をつく。

「バイト連中に飲みに行こうって誘われたんです」

「色気ねーなー。じゃ、これで行ってこい」

ポケットから財布を出して万札をくれた。

「気前いいっすね」

「高給取りだからな」

「ありがたく使わせてもらいますよ」

「お前がデートってんならもっと出してやんのに」

「その言葉忘れないでくださいね」

「そんなの無いって思ってるから言えるんだよ」

憐れみを含んだ視線と口調にちょっとムカつく。

くそオヤジめ!
そのうち絶対巻き上げてやるッ!
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