『好き』を教えて
ぐっすり眠っている高野を支えタクシーを捉まえて押し込む。

運転手に行き先を告げて車を出してもらうと、俺にもたれる高野にため息をついた。

歓迎会だからって飲まされてたもんなぁ…。
断るという事を知らないのか几帳面に注がれるまま飲んでりゃこうなるよな。

こいつってホント世間知らずだ。

半ば呆れながらも寝顔から目が離せない。

構わずにいようと思っても構わずにはいられないな…。



アパート前でタクシーを帰し、高野に声をかける。

「高野!家に着いたぞ。鍵は?」

「……ここ…に…」

半分寝ながらバッグを探るがなかなか出てこず、仕方なくバッグを取り上げ鍵を取り出す。


ベッドに高野を寝かせるとコートを脱がせた。

「…お…水…ほし…」

呟く微かな声にグラスに水を注いで高野の身体を起こす。

グラスを手渡すと一気に飲み干した。

「あ…れ…?木下…さ…ん?」

「あれ?じゃねーよ。寝こけるまで飲むな」

「はい…」

照れくさそうに笑う高野に心臓がドギマギする。

中学生か!

「じゃ、帰るから」

玄関に向かおうとする俺の手を高野が掴む。

「…何だ?」
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