『好き』を教えて
あの出来事以来、どーも高野が気になって仕方がない。

ぼんやり高野を見ている自分に気づくと殴りたくなる。

俺、何やってんだ…。

相変わらず、高野のカレシは来店の度に必ず声をかけていき、高野も嬉しそうにしている。

鈍臭い、彼氏持ちの女じゃねーか。
大体、店のバイトに妙な気を持つのは禁物だろ。
珍しい光景を見たから感心してるだけだ!
断じて恋愛感情じゃない!







営業時間が終わり、店を閉めバイトを帰らせても俺にはまだ仕事がある。

一人事務所にいると静かな廊下に靴音が響いた。

時間も時間だし十分用心しつつドアを細く開くと、それに驚いたのか小さな悲鳴が聞こえた。

「…高野?帰ったんじゃなかったのか?何やってんだ?」

緊張を解いた俺が半ば呆れたように訊ねると、高野は申し訳なさそうな顔で俺を見上げる。

「…忘れ物を…。思い出したら気になって…」

「一人で来たのか?」

コクリと頷く高野に、不用心だろとため息が洩れた。

「ちょっと事務所入って待ってろ。もう終わるから送ってやる」
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