メガネの裏はひとりじめⅠ
「何で?」
『み…、壱翔君がお腹減ったって』
「ふーん。そっか。可鈴は?」
『…へ?』
「お腹。空いた?」
『う、ううん!まだ大丈夫』
「そ?じゃあ――…壱翔」
ふわり、あたしの返事に道留君は柔らかく笑みを一つ零すと、不意に巳陵壱翔へとまた漆黒を持っていって、巳陵壱翔は「わあってるよ」面倒くさそうに頭を掻く。
「ちゃんと家帰るって」
は、はぁああ!?
平然と吐かれたセリフにあたしは目を見開いてしまい、思わず声を上げそうになる。
家帰るってどういうこと!?
今からさぁデートを開始しましょうって時にお家に帰るだなんて、何考えてんの?
フツフツと怒りにも似た感情が沸き上がってくるのを感じる。
だけど、あたしの怒りもほんの一瞬、タメ息混じりに口を開いた道留君が言ったセリフで巳陵壱翔のセリフの意味を理解した。
「俺、お前のその適当さ嫌い。デートにスウェットで来るとか有り得ねぇ」
「はぁ?ふざけんな。誰だよ。着替える時間すらくれなかったくそボケは」