メガネの裏はひとりじめⅠ



「ほんとすぐ泣くな可鈴はー。」



なでなでと撫でるように頬っぺたに添えられた手の指は涙を拭って、道留君の声はいつもの声に元通り。



柔らかくはにかむ道留君は「可愛い。」なんて照れもなく言って、すぐにリンゴみたいに赤くなったあたしをクスクスと笑った。



うん。これが道留君だ。



素顔を知ったのはつい昨日のことなのに、弱々しい道留君は道留君じゃないと思う。



道留君にはいつも笑顔でいて欲しいな。



…なんて思うあたしは道留君に恋してるんだと気付いたばっかなのにもう彼女気取り(笑)



赤くなって、上目で道留君を見上げるあたしと、そんなあたしを相変わらず腰に手を回したままはにかんだ表情で見下ろす道留君。



そんなあたし達を見て「仲良しねー。」そうクスクス笑う人も居れば、頬っぺたをぽっと染めて立ち止まる人や歩きながら瞳に映す人。



中には眉を顰める人とか別に興味がないって人が周りに居て、見られてるってことにあたしも、多分道留君も気付いていなかった。



ていうか気付いてない方がいいのかも。気付いたあとの羞恥さがハンパないと思うから。


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