メガネの裏はひとりじめⅠ
「んじゃ、デート始めましょうか?」
小さく首を傾げてふわりと漆黒の髪を揺らす道留君の表情ははにかんだ表情から不敵な表情になって、セリフにもそれにもキュンとするあたし。
なんか…キュンする回数増えてるかも…っ。
跳ねる胸にドキドキと煩く鳴る心臓。
そんなことを思いながら返事の代わりにこくんと頷いたあたしの腰からは手が離れ、離れた手はあたしの右手を取った。
「恋人繋ぎ。ね?」
ぬぁ…っ。道留君…っ。反則だよ〜…。
取ったあたしの手と自分の手を持ち上げて、するすると指同士を絡ませた道留君はキュッと握るとあたしに向ける無邪気な笑顔。
言うまでもなく赤く染まった顔で『ううううん…っ。』どもりながら唇を開いたあたしも道留君の手を握った。
恥ずかしい。でも――…嬉しい。
手を繋ぐのって、こんなに照れくさいことなんだ。
一度も経験したことがなかったあたしはそんなの知らなくて。思いもしなくて。
ホームに着いた電車に乗って空いてる席に座ってもずっと繋がれたままの右手と左手に胸は高鳴り続けたままだった。